プロトコール
1)受精卵の細胞質へのマイクロインジェクションによるトランスジェニックマウスの作製
①マイクロインジェクションに用いるプラスミドDNAは、QIA-filter plasmid maxi kit(キアゲン社)で調整後、フェノール/クロロホルム処理を行う*1.エタノール沈殿ののち、最終濃度が25ng/µLになるようにトランスジェニックバッファーに溶解する.
②Tol2移転酵素mRNA(250ng/µL)をプラスミド溶液の0.1倍量加える*2.混合溶液を0.22µmフィルターに通し、微小なゴミを取り除く.
③インジェクションニードルに混合溶液を3µL注入し、蒸発を防ぐためミネラルオイルを重層する.ニードルをインジェクション装置にセットする.
④マウスを交配させ卵管から取り出した受精卵を用意する.受精卵をKSOM培地中で37℃のCO2インキュベーターに保持する.
⑤顕微鏡ステージ上のガラスプレートにミネラルオイルでカバーされたM2培地ドロップを準備する.37℃のCO2インキュベーターから20個程度の受精卵を取り出してM2培地中へ移す.
⑥受精卵細胞質へインジェクションを行う*3.
⑦すべての受精卵へのインジェクション終了後、37℃のCO2インキュベーターへ戻す.④〜⑥の作業を15分以内に終了するようにする.
⑧1時間ほどCO2インキュベーターで培養後、生存している受精卵を選び、15個ずつミネラルオイル中のKSOM培地のドロップへ移す.
⑨微小ガラス管トランスファーピペットでレシピエントマウスの卵管へ移植する*4.
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*1プラスミド精製キットにはRNase処理の工程があるので、フェノール/クロロフォルム処理で完全にRNase活性を除去しておくことが重要である.
*2われわれはマイクロインジェクションに用いるプラスミドと転移酵素mRNAの混合溶液をトランスジェニック用バッファー中で3時間透析を行うことがある.エタノール沈殿によるバッファー交換操作がうまくいっていれば透析操作は必要ない.
*3従来の前核インジェクションに慣れている人には細胞質のインジェクションはやや勝手が違っていて難しいと感じるかもしれない.細胞質のインジェクションでは針先が太りすぎたり溶液を過剰に注入したりすると受精卵が破裂することがある.実際の細胞質へのインジェクションの様子をみるとコツをつかみやすいので、以下の動画を参照するとよい(http://sayer.lab.nig.ac.jp/~sumiyama/images/Cl001.wmvまたは実験医学online参照).
*4通常の前核インジェクションの場合、移植した受精卵が正常に発生する頻度はおよそ20%以下であるが、細胞質インジェクションの場合ではおよそ50%以上なので、1匹のレシピエントマウスへの卵管移植するインジェクション済み受精卵の数は最大でも15個程度にとどめておいた方がよい.
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